不本意な初夜でしたが、愛され懐妊妻になりました~エリート御曹司と育み婚~
「私、病院で先生に前置胎盤のことを言われてから、ずっとマイナスなことばかり考えちゃってた……」
出産のときに、もしも大量出血したら?
何よりその前に出血して、お腹の子に何かあったらどうしようって、嫌な想像ばかりしていた。
「牡丹がそれだけ心配するのも、お腹の子のことを大切に思ってるからこそだろ。牡丹はきっと良い母親になるよ。牡丹が母親で、この子は幸せだな」
優しく髪を撫でられて、目頭が熱くなった。
私を見つめる眼差しはとても穏やかで、陽だまりみたいに温かい。
妊娠してからというもの、幸せな気持ちになることも多かったけど、不安になることもそれ以上にたくさんあった。
無事にこの子を産めるんだろうか。産めたとしても自分はちゃんと良い母親になれるのか? なんて、ふとしたときに後ろ向きなことを考えてしまう。
今だってそう。前置胎盤だと言われて、考えたくないことを考えて、ネットで調べて不安になって落ち込んだ。
でも灯は、そんな私が母親でこの子は幸せだと断言してくれた。
この子の母親は世界でたったひとり、私だけだ。私はこの子を絶対に無事に産んであげたい。幸せにしたい。
不安になるのはその気持ちの裏返しで、弱気になることは悪いことじゃないと彼は私の弱さを強さに変えてくれた。
「灯、ありがとう……」
胸がいっぱいになった私は、隣に座る灯の肩に額をのせてもたれかかった。
するとあからさまに灯の身体が強ばり、力が入ったのがわかる。
私が自分からもたれかかるのなんて初めてだから、灯はきっと驚いたんだろう。