不本意な初夜でしたが、愛され懐妊妻になりました~エリート御曹司と育み婚~
「牡丹?」
「私……灯と結婚してよかったって、今、心の底から思ってるよ」
「え……」
「灯は今、私が母親でこの子は幸せだって言ってくれたけど、私は灯が父親で、この子は幸せだなぁって思うよ」
そう言うと私は未だに驚いている様子の灯の手を取り、そっと自身のお腹の上にのせた。
トクン、トクン、トクン……。
ここには今、灯と私の間に宿った愛しい子がいる。
本当は、随分前から灯が私のお腹に触れたがっていることにも気づいていたけど、この手を取ることができずにいた。
灯は自分には、私のお腹に触れる資格がないと思っていたんだろう。
私の意思を無視して結婚を強行しただけでなく、私を無理矢理抱いたことに、灯は未だに大きな罪悪感と後悔の念を抱いていることに、私は以前から気がついていた。
「これからは触れたいときに触れていいよ。だって、この子の父親は他でもない、灯なんだから」
私は真っすぐに、灯の綺麗な目を見つめた。
「きっとこの子も、パパの声や温もりを感じたがっているはずだと思うから。それに、実は最近ね、お腹の中でポコポコって空気が動く感じがするときがあるの。あ……ほら、今も……」
「……感じる」
「え?」
「ここに、俺達の子供がいるんだな。牡丹とこの子のぬくもりが、手のひらを通じて伝わってくる」
思わず息を飲んだのは、そう言った灯の瞳が濡れていたからだ。
涙はこぼれていないけれど、その目と目があった瞬間、私の胸には迫るような愛おしさがこみ上げた。