不本意な初夜でしたが、愛され懐妊妻になりました~エリート御曹司と育み婚~
「牡丹、ありがとう。それと……ごめんな」
これまでずっと、交わることのなかったふたつの心。
だけど今、胸にあふれる思いと私の心は間違いなく、真っすぐに灯の方を向いていた。
「もう……謝らないで。たった今伝えた通り、私は灯の奥さんになれて幸せだよ」
言葉にした瞬間、涙がこぼれた。
灯はきっと、意地でも私には涙を見せないだろうから、代わりに私が涙を流した。
これからは灯と一緒に泣いて、一緒に笑って生きていきたい。
そう思った瞬間、私はようやく彼と夫婦になれたような気がした。
「……ヤバイな」
「え?」
「多分、今の俺は世界で一番幸せな男だ」
「そんな……大袈裟だよ」
「大袈裟じゃない。本当に、心の底からそう思うんだ」
「あ――っ」
言葉と同時に身体を強く抱きしめられた。
ドクン、ドクン、と鼓膜を揺らす心地の良い鼓動の音は灯のもので、私はその音を抱きしめるように彼の背中に腕をまわした。
誰かを抱きしめるって、こんなに幸せなことだったんだ。
まるで最初からそうなることが決まっていたみたいに、私の身体は灯の身体にピッタリと沿うように収まった。
「なぁ。キスしてもいい?」
「それ、今さら聞くの……?」
額と額を合わせてクスクスと笑い合った私たちは、どちらからともなく目を閉じてキスをした。
「ん……っ」
甘く切ない声が口からもれる。
下唇を食べるように優しく噛まれ、そっと口を開ければキスは更に深くなった。