不本意な初夜でしたが、愛され懐妊妻になりました~エリート御曹司と育み婚~
「ん……っ、灯……」
「……はぁ、ダメだ」
「どうしたの?」
「俺、お腹の子が男だったら、大人気なく牡丹の取り合いをすると思う」
キスのあとの思いがけない言葉に、私は一瞬固まってから噴き出した。
「ふふっ、何それ。灯って、そんなキャラだったっけ?」
「牡丹はわかってないんだよ。俺が牡丹のことになると、どれだけ心が狭くなるかってこと」
「うーん、でも、もし女の子だったらどうなるの? もしかして、早速私からお腹の子に乗り換えちゃう?」
冗談交じりに尋ねると、灯は意外にも返事に困った様子を見せた。
「ちょっと、そこは私だけって即答するところじゃないの?」
「バカ。乗り換えるとかじゃなくて、ふたりとも大事にするに決まってるだろ」
「……浮気者」
「何、ヤキモチやくの?」
「灯じゃあるまいし、私がヤキモチなんてやくわけないでしょ」
ふんっと顔をそむければ、灯が追いかけるように私の顔を覗き込んだ。
「なんだ、妬いてくれたら最高に嬉しいのに」
「……灯のバカ」
「好きだよ牡丹。世界で一番愛してる」
最上級の愛の言葉を耳元で囁かれ、不本意にもまた、涙が溢れそうになった。
「なぁ、今日からは同じベッドで寝よう。それで朝起きたら、今度はおはようのキスをさせて」
甘いお強請りを断る理由は、今の私にはない。
だから私は返事の代わりにそっと振り向くと、灯の瞼に触れるだけのキスをした。