不本意な初夜でしたが、愛され懐妊妻になりました~エリート御曹司と育み婚~
 

「でも、お医者さんの立場上、〝絶対〟なんて言えないんじゃない?」

「そんなことはわかってるけど、仮にも顔見知りが相手なんだから、もうちょっと気の利いた言い方もできただろ」


 不貞腐れる灯が珍しくて、また顔が綻んだ。


「でも、まさか森先輩が産婦人科医になってたなんてビックリだったよね。笑った顔とか高校生の頃から全然変わってなくて、なんだか懐かしくなっちゃった」


 あの頃は学校内で憧れの森先輩の姿を見つけるたびにドキドキして、友達と一緒に盛り上がっていたんだよね。

 先輩とは結局一度も話すことなく終わってしまったけれど、まさか先輩が私のことを知ってくれていたなんて思わなかったな。


「……今、森のこと考えてるだろ」

「え⁉」

「牡丹、全部顔に出てるんだよ。ほんとムカつく」


 と、言葉と同時に左手を捕まれ、何をされるのかと思ったら薬指を優しく噛まれた。


「……んっ。ちょっと、灯……っ」

「よそ見をした牡丹が悪い。高校のときも、今も……牡丹は俺だけに泣かされて、振り回されてればいいんだよ」


 そう言うと灯は、結婚指輪をつけていない私の薬指を優しく撫でた。

 指輪は安定期を迎えた頃に外したんだ。なんでも出産のときに指が浮腫んだりして指輪を外せなくなった場合、指輪を切られることになるって聞いたから。 

 
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