不本意な初夜でしたが、愛され懐妊妻になりました~エリート御曹司と育み婚~
「泣かされて、振り回されていればいい……って、酷くない?」
「仕方ないだろ。それ以外の方法で、牡丹の目を俺に向けさせる方法がわからなかったんだから」
灯の視線が私の薬指から瞳に移った。
私を見る灯の目はどこか切なげで、胸の奥がキュウッと強く締め付けられた。
「灯って、実はすごく不器用なの?」
「牡丹のことに関してだけだな。あとのことについては器用すぎるほどだって自覚はある」
なんて嫌味で自意識過剰な発言だろう。
でも、こんなこともサラリと言えちゃうくらい、灯は本当になんでも人並み以上にこなす凄い人なんだと私は知っている。
だからこそ、そういう灯が私だけに不器用になると聞いて、嬉しかった。
嬉しいなんて言ったら灯は嫌な気持ちになるかもしれないけれど、灯にとって私は昔から特別だったんだと知れて、すごく幸せな気持ちになった。
「そういう灯だから、私は全部を憎めなかったのかも」
ぽつりとこぼした私は、灯の手をそっと握り返した。
「勝手に結婚を決められて、一時期は本気で腹が立って、なんで私がこんな目に遭わなきゃいけないのって思ってた。灯が何を考えてるのかわからなくて、すごく苦手に感じて、こんなんで本当に結婚生活なんてやっていけるのかわからなかったけど……」
ゆっくりと顔を上げれば、いつでも私を真っすぐに見つめてくれる彼がいる。
今はただ、それがすごく幸せで心強く感じた。
この人と、一生を添い遂げたいと心から思うんだ。