不本意な初夜でしたが、愛され懐妊妻になりました~エリート御曹司と育み婚~
「ご、ごめんなさい。私、勘違いして、灯に酷いこと言って……」
「いや、俺も感情的になってた部分もあるからお互い様だ。でも、とにかく牡丹には無理だけはしないでほしい。それだけは、絶対に約束してくれ」
私を見る灯の目は力強いのに、瞳の奥には僅かな不安が揺れているような気がした。
私が母親としてお腹の子を守れるのか不安なように、灯もきっと父親として不安に思うことがたくさんあるんだ。
私達はふたりで力を合わせて、お腹の子を守っていかなければならない。
ひとりでは難しいことだって、灯とふたりでなら乗り越えていけるような気がするから不思議だ。
「わかった、約束する。私、絶対にお腹の子を無事に産んであげたい。それで、私も生きてこの子を抱きしめたい」
お産に絶対なんてない。それでも私はこの子のためにも灯のためにも、今できる精いっぱいのことをしていきたいと思うんだ。
「あ……今、お腹の中で動いたかも」
「え? どこだ?」
「ほら、ここ……」
灯の手を掴んで、たった今振動を感じた場所にのせれば、またお腹の中でポコポコと空気が弾むような感覚があった。
「本当だ。今、動いた」
「でしょ? きっと今、自分もここにいるよーって、一生懸命教えてくれてるんだね」
手と手を重ね合わせれば、じんわりと胸が温かくなった。
大丈夫、私達はひとりじゃない。
心の中でそう言って微笑めば、お腹の中にいる愛しい我が子が「一緒に頑張るよ」と答えてくれたような気がした。