不本意な初夜でしたが、愛され懐妊妻になりました~エリート御曹司と育み婚~
「あの……入院となると仕事を休職しなければならないので、診断書とかって書いていただけますか? あと、今のうちに主人と職場に連絡を入れておきたいんですが……」
「いいですよ〜。診断書については志村先生にお伝えしておきますね。それじゃあ、ちょっとだけ場所を移動しましょうか」
そうして私は看護師さんに車椅子を押されながら、産婦人科の待合室から少し離れた廊下の隅に移動した。
そこで、まず一番に連絡を入れたのは灯だ。今日は朝から会議をしているはずだから、とりあえずメッセージだけ入れておいた。
次に電話をかけるのはフジロイヤル。フロント・マネージャーの米田さんに繋いでもらって、緊急入院になってしまったことを伝えた。
「すみません、結局ご迷惑ばかりおかけしてしまって……」
『大丈夫大丈夫、別に、謝ることじゃないんだから。山城さんは妊娠してから今日まで、よく頑張ってくれてたよ。こっちのことは気にせず、とにかく今はお腹の子と自分の身体のことだけを考えな。で、色々落ち着いたら赤ちゃんと一緒に、僕たちに元気な顔を見せにおいで』
米田さんの寛大な対応と励ましに、今日まで私はどれだけ支えられてきたかわからない。
「本当にありがとうございます。私、必ず笑顔で職場復帰します。皆さんにも、どうぞよろしくお伝えください」
電話口で頭を下げれば、米田さんは『待ってるぞ』と嬉しそうに答えてくれた。
「あ……」
灯から電話が掛かってきたのは、米田さんとの通話が終わった直後だ。
急いで画面をスライドして携帯電話を耳に当てれば、ほんの少し焦った様子の灯の声が鼓膜を揺らした。