不本意な初夜でしたが、愛され懐妊妻になりました~エリート御曹司と育み婚~
「──藤嶋さんの場合、三十七週に入った時点で帝王切開でのお産を予定しておりましたが、やはりそこまでお腹の中に子供を入れておくのは危険と判断しました」
「前にも説明したとおり、前置胎盤に加えて前置血管という稀な症例でもあることから、陣痛がくる前に赤ちゃんをお腹から取り出すべきというのが、僕達の見解です」
志村先生と森先輩の話を聞きながら、私は心の中でお腹の子に、臨月までお腹に入れておいてあげられないことを謝った。
本当なら、万全の状態であなたを産んであげたかった。
でも、それはどうしてもできそうにない。だけど、あなたが元気に生まれてこられるように助けてくれる人が、たくさんいるよ。
「正産期前に赤ちゃんをお腹から取り出した場合、肺の機能が非完全で呼吸が上手にできなかったりすることがあるので、赤ちゃんは産まれてすぐにNICUに入る可能性が高いと思っていてください」
「加えて、出産時の出血のリスクを考え、入院期間中に藤嶋さん自身の血液を貯血(ちょけつ)する予定です」
「私自身の血を抜いて貯めておくってことですか?」
「はい。そうすることで、もしも出産時に大量出血が起こった際、予め貯めておいた藤嶋さんご自身の血を戻すことができますので」
志村先生いわく、それでも血が足りなければ輸血をするということだった。
「そして以前にもお伝えしましたとおり、必ずおふたりとも助けられるとは断言できません」
事務的に、淡々と告げられた言葉を受けて、私は膝の上で握りしめていた手に力を込めた。