不本意な初夜でしたが、愛され懐妊妻になりました~エリート御曹司と育み婚~
「それではまた後日、改めて帝王切開の予定日を決めましょう」
「そういえば、お子さんの性別ってまだ聞いてないんですって?」
話のまとめに入った志村先生の言葉に待ったをかけたのは森先輩だ。
私と灯は数回目を瞬かせたあと、お互いに顔を見合わせた。
「はい。産まれてきてからのお楽しみにしようと思って……」
「へぇ、藤嶋はどっちがいいとか、そういうのないんだ?」
先に相好を崩したのは森先輩だった。
旧友に話を振られた灯は素知らぬ顔をすると、テーブルの下で私の手を握った。
「元気に生まれてきてくれれば、別にどっちでもいい。どちらにせよ、牡丹と同様に俺が命をかけて守り抜くのは決まってるから」
真摯な言葉に、胸が熱くなってジンと震えた。
見つめ合う私達を森先輩はやっぱり面白そうに見ていたけど、その表情はとても優しいものだった。
──その後、志村先生と森先輩や他の先生たちとの話し合いの末、私の帝王切開はお腹の子が三十五週と三日を迎える日に決定した。
「でも、それまでに出血とかあれば緊急帝王切開になることもあるから、とにかく安静にしているように」
お腹の子と過ごす貴重で尊い時間はあと少し。
私は一日一日を当たり前に過ごせることに感謝しながら、愛しい我が子と会える日を待ち遠しく思った。