不本意な初夜でしたが、愛され懐妊妻になりました~エリート御曹司と育み婚~
「そもそも、高校生のときに俺がハッキリと牡丹の意にそぐわない結婚は受け入れられないとふたりに答えていれば、牡丹とご両親の間にここまでの亀裂が入ることもなかっただろ」
やっぱり……灯は、気付いていたんだ。
灯との結婚が決まってから、両親が私に対して大きなプレッシャーをかけ続けていたこと。それによって私は灯に対する苦手意識が増し、同時に両親と上手くいかなくなってしまったことを、彼はちゃんとわかっていた。
「俺のせいで、牡丹にも牡丹のご両親にも辛い思いをさせた。だから、これまでのことは全部俺に責任がある」
灯はそう言ってまつ毛を伏せたけれど、私は今さら彼を責める気にはなれなかった。
第一に、娘の意見に耳を傾けることをしなかった両親も悪い。
自分たちが感じている恩義に、娘の私を使って報いようとしたことは絶対に間違っていた。
次に、もっときちんと両親と向き合い、嫌なものは嫌だと抗わなかった私にも責任があると思う。
私はいつの間にか自分の意見を口にすることを辞めて、両親のため、会社の社員たちのため、両親に従い灯の妻になるしかないと自分で自分の未来を諦めた。
だから、これまでのことは誰かひとりに責任があると決めつけられることじゃない。
とはいえ、妊娠報告をしたときに両親が私に言った言葉は、許容の範囲を超える内容だったけれど……。
私は灯の話を聞きながら、引き出しにしまっていた安産祈願のお守りを取り出して手のひらの上にのせた。