不本意な初夜でしたが、愛され懐妊妻になりました~エリート御曹司と育み婚~
「ふふっ。さっき会ったばっかりなのに、もう百花に会いたくなっちゃった」
私はまだまだ母親としては力不足なところばかりだけど、それでもいつかの未来で、百花が笑顔の花を咲かせられるように精いっぱい愛情を注いでいきたい。
「百花に会いに行くのもいいけど、まずは自分の身体を休めろよ」
「あー、そんなこと言って、また自分だけ百花に会いに行くつもりでしょ? 灯の浮気者。もう知らない」
おどけてみせたら、ベッドに腰掛けていた灯の顔が予告なく近づいた。
「ん……っ」
「バカ、浮気なんてするか。もう何年、牡丹一筋だと思ってるんだ。ここまできたら死ぬまで牡丹一筋に決まってる」
殺し文句だ。不意打ちのキスも相まって、私は真っ赤になって固まった。
ドキドキと高鳴る鼓動が今、自分が彼と同じ時を生きていることを教えてくれる。
母のお腹の中で生を受け、初めて心臓が動き始めたときには知る由もなかったことだ。
──私達の胸の音は、生きている限り、いつだって幸せを奏でている。