不本意な初夜でしたが、愛され懐妊妻になりました~エリート御曹司と育み婚~
 

「牡丹、そろそろ行こうか」

「うん……。でも、ほんとにいいのかな……。お母さんたちに百花を預けて、私達だけで出掛けるなんて……」


 たった今出てきたばかりの灯の実家を振り返った私の顔は曇ってしまう。

 百花が産まれて半年と少しが経った今日は、私の二十九歳の誕生日。

 だから前々から灯が灯のご両親に加え、うちの両親に相談をして、今日一日だけは百花を預けさせてもらって、私達ふたりだけで出掛けるという計画を立てていた。


「百花、泣いたりしてないかな? 大丈夫かな……」


 でも、いざ当日になって百花を預けて家を出たら、百花のことが気になって仕方がなくて、落ち着かなかった。

 百花と離れるのは、百花がNICUに入院していたとき以来だ。

 最近はズリバイもするようになって本格的に目が離せなくなってきたし、母親なのに子供を預けて遊びに出かけること自体に罪悪感を抱いてしまった。


「そんなに心配しなくても大丈夫だよ。百花に夢中の両家の両親に加えて、うちの親父が元保育士のベビーシッターまで呼んでるんだぞ?」

「それは、確かに心強いけど……。でも、急に熱を出したりすることもあるかもしれないし……」

「そのときは、すぐに俺と牡丹に連絡をするように伝えてあるし、かかりつけ医の連絡先も伝えてきてある。せっかく貰った貴重な時間なんだから、今日くらいは牡丹自身の身体と心を休める時間にしてもいいんじゃないか?」


 そう言う灯だって、毎日の仕事と育児に疲れているはずだ。

 だけど私の誕生日のために色々計画してくれて、こうして羽を伸ばす時間を作ってくれたのだから、無下にするのも申し訳ない。

 
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