不本意な初夜でしたが、愛され懐妊妻になりました~エリート御曹司と育み婚~
「……うん、そうだね。両親たちも、百花といられて嬉しいって言ってくれてたし、今日だけは甘えてみる」
笑顔を見せれば、灯は優しく微笑み返してくれた。
そのまま私達は車に乗り込むと、灯が予約してくれていたレストランに向かった。
「はぁ……お腹いっぱい」
一流シェフが手掛けた高級フレンチを食べるのなんて、いつぶりだろう。
私は見た目も味も絶品のフルコースを堪能して、幸福感を噛み締めた。
妊娠中は悪阻もあったり、食事にも気を使っていたりで、こういうお店に来る機会がなかったもんね……。
妊娠後期は入院していたし、産後も病院通いでバタバタしていたり、百花が退院してきてからはもちろんこういう落ち着いたお店に来るなんて選択肢もなかった。
というか、そもそも灯とふたりでこういうお店に来ること自体が初めてだ。
夫婦になる前に一度だけ、結婚の日取りを決めようという名目で食事に行ったことはあるけれど、あのときは灯に対して苦手意識を持っていたから料理の味を堪能するどころではなかった。
「満足してもらえたみたいでよかった。それじゃあ次の場所に移動しよう」
今日は昼の十一時に出発し、二十一時には百花のもとへ帰る予定だ。
レストランを出た私達は灯の左ハンドルの愛車に乗り込むと、次は私が希望していた海の見える海浜公園へと向かった。
「なぁ、本当にここでいいのか? もっと、百花と一緒にいるときにはできないことや、行けない場所に行ったほうがよかったんじゃないか?」
私達は公園の近くのカフェでコーヒーとオレンジジュースをテイクアウトすると、持ってきたレジャーシートを芝生の上に広げて腰を下ろした。