不本意な初夜でしたが、愛され懐妊妻になりました~エリート御曹司と育み婚~
「牡丹(ぼたん)、これからよろしく」
落ち着いた低音が、耳障りの良い言葉を奏でる。
綺麗なアーモンドアイと目が合った瞬間、不覚にもドキリとした。
……ほんと嫌味なくらい完璧な人。
きっと、この結婚を知る人のほとんどが、私を幸運な女性だと言うだろう。
でも、お生憎様。私は今、『幸せ』とは真逆の場所にいる。
だって、これから夫婦になるはずの私たちの間には一切の恋愛感情もなく、今から交わされるのも私達にとっては〝初めてのキス〟なのだから。
「よろしく、ね」
心の中で溜め息をつきながら、しぶしぶ返事をすると、私を静かに見つめる彼──藤嶋 灯(ふじしま ともり)が、柔らかに目を細めて笑った。
……ああ、もう。私達は、どうしてこうなった?
どうして、結婚なんてするはめになったんだろう。
だけど思い返せば、生まれたときから……ううん。
生まれる前から、こうなることが決まっていたのかもしれない──。