不本意な初夜でしたが、愛され懐妊妻になりました~エリート御曹司と育み婚~
 

「園宮(そのみや)か? 俺だ。明日はどうしても外せない私用が入ったから、予定を組み直して今後のスケジュールを調整してくれ」


 どうやら電話の相手は、灯の秘書を務めている園宮さんのようだった。


「ああ、悪いな。また、追って連絡する。あとのことはよろしく頼む」


 そうしてすぐに通話を終えた灯は携帯電話を置くと、改めて私に向き直った。


「そういうわけだから、明日は朝イチで産婦人科に行くぞ」

「え?」

「というか、そんな薄着でいたら身体に良くないんじゃないか? 食事は何か食べたのか? まさか、俺が置いていった水以外、昨日からほとんど何も食べてないんじゃないだろうな」


 灯にじろりと睨まれたけれど、私は何が起きたのかサッパリわからず、ぽかんと口を開けたまま唖然としてしまった。


「いや……そうか、悪阻があったら、食べたくても食べられないこともあるのか?」


 灯の口から〝悪阻〟なんて言葉が聞けるなんてビックリだ。というか、こんなにもこの言葉が似合わない人も他にいない気がする。


「なぁ、俺の話、ちゃんと聞いてるのか?」

「あ……ご、ごめんなさい。聞いてます、聞いてるけど……」


 色々と、受け止めきれない。

 今の話を真に受けていいなら、灯は明日、私と一緒に産婦人科に行くつもりだってことなの?


「あとで、この辺りで評判の良さそうな産婦人科を調べないとな」

「あの……灯。私、この子を産んでもいいの?」


 会話が噛み合っていないことは重々承知だ。

 でも聞かずにはいられないから思い切って尋ねると、灯はまた驚いた顔をしたあと、何故か怪訝そうに眉根を寄せた。

 
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