不本意な初夜でしたが、愛され懐妊妻になりました~エリート御曹司と育み婚~
「当たり前のことを聞くなよ。いや……まさか、牡丹は産むつもりはないってことか?」
今度は珍しく語尾を弱めた灯に面食らった私は、下腹部に触れたままの手に視線を落とした。
ここで私が産まない選択をしたら、今、お腹にいるこの子はどうなる?
答えは簡単だけど、どうしても言葉にはしたくないし、その状況を想像するのも嫌だった。
きっと、そう思う時点で私の答えは決まっていたんだと思う。
多分、私は灯がなんと言おうと、この子を産む決意をしていた。
「……産みたい。私、この子を産んで抱きしめたい」
言葉にした瞬間、鼻の奥がツンと痛んで目に涙が滲んだ。
私は多分、この結論に至る最後の一押しを、灯にしてほしかったんだ。
自分でも思っていた以上に動揺していたんだと思い知る。
すると、そんな私を見た灯は手にしていたものすべてを足元に下ろすと、荷物をなくした腕で椅子に座っている私の上半身を抱き寄せた。
「灯……?」
「勝手だってわかってるけど、俺も牡丹に産んでほしいと思ってる。牡丹と、お腹にいる子を守るためならなんだってするって誓うから、絶対に産んでほしい」
温かい手は私の背中を優しく撫で、さらにきつく自分の腕の中へと抱き寄せた。
灯は私の妊娠に嫌な顔をするどころか、心から喜んでくれているのだということが伝わってくる。
そう思ったら大きな喜びと安心感、同時にいくつかの疑問が胸に湧いて、私は思わず心の中で首をひねった。