不本意な初夜でしたが、愛され懐妊妻になりました~エリート御曹司と育み婚~
私たちは愛のない結婚をしたはずだった。十数年前の公園でのやり取りも、その後の結婚に至ってから今日までの灯の言動に、【愛】を感じたことはなかったのだ。
灯が私を妻にした理由は未だにわからないままだけれど、少なくとも私は灯を愛しているから結婚したわけじゃなかった。
だから私は灯も当然、私と同じで私を愛してなんかいないと思っていたけど……。
今、私を抱きしめている灯の腕と言葉には、力強い愛と慈しみを感じる。
そんなふうに思うのは、私の情緒が不安定なせい?
それとも、そうであったらいいのにと、私が淡い期待を抱いているせいなんだろうか。
「あの、灯……」
「どうした?」
「灯はどうして私と……。う、ううん、やっぱりなんでもない」
初めての夜にも聞きたかった質問だ。
灯はどうして私と結婚したの?
でも、出かかった言葉は結局、勇気が持てなくて最後まで尋ねることができなかった。
今は、初めて感じる温もりを大切にしていたかったんだ。
答えを聞いたら期待していたものとは違ったときに、せっかく和んだ空気がまた冷たいものに逆戻りしてしまうような気がして怖かった。