不本意な初夜でしたが、愛され懐妊妻になりました~エリート御曹司と育み婚~
「はい、確認できました。安定期に入って腹部エコーができるようになったら、ご主人にも一緒に診察室でモニターを見ながら確認していただけるようになりますよ」
そう言った先生は、白黒の小さな写真を灯に手渡した。
これが噂のエコー写真というものだろう。灯は渡されたそれを大切そうに受け取り、ジッと静かに見つめていた。
「それじゃあ、次の検診は……そうだな、三週間後とかに来てもらえるかな」
だけど、先生がそう言って診察を終わろうとしたら、
「すみません、もうひとついいですか。妻の悪阻が辛いようなのですが、どのように対処すればいいでしょうか?」
突然、灯がエコー写真から顔を上げて尋ねた。
私はまさかそんなことを先生に聞いてくれるとは思わなくて、隣に座る灯の顔をまじまじと見つめてしまった。
灯……お腹の子のことだけじゃなく、私の悪阻のことも忘れずに気にしてくれていたんだ。
昨日も妊娠報告をしたあとに、ゼリーやら飲み物やらを買いに行ってくれたから、もしかすると昨夜からずっと気にかけてくれていたのかもしれない。
「そうなんですね。症状は、辛いほうなのかな?」
「あ……は、はい。昨日は朝から吐き気が酷くて、あまり食事がとれなくて……。今朝は昨日に比べたらマシなんですが、やっぱりあまり食欲がなくて」
慌てて我に返って質問に答えた私は、悪阻の症状が出てから口にできたものを思い浮かべた。
朝もご飯を食べようと思っても食べられなくて、結局、灯が水と一緒に買ってきてくれていたフルーツゼリーを少し口にできた程度だ。