不本意な初夜でしたが、愛され懐妊妻になりました~エリート御曹司と育み婚~
「わかった。でも、無理だけはするなよ。何か少しでも食べたいと思えるものがあれば、すぐに言って」
「うん……ありがとう」
素直にお礼の言葉が口から出た。
すると灯は一瞬だけ驚いたような顔をしたあと、何故か照れ臭そうに頬をかいて咳払いをした。
もしかして……灯、照れてるの?
そういえば、こうやって普通の会話ができているのはいつぶりだろう。
身の置きどころがなさそうにしていた灯は、腕を組みながら何気なく私の隣に腰を下ろした。
そばに灯の体温を感じたら私まで照れくさくなって、私達はお互いに無言でソファに座ったまま固まってしまった。
「……ひとつ、牡丹にお願いがあるんだけど」
と、しばらくの沈黙を破ったのは灯だ。
「さっきのエコー写真、俺が貰ってもいいか?」
「エコー写真を?」
「ああ。普段持ち歩いている手帳に挟んでおきたくて。もちろん俺以外の人間に見せるつもりはないし、牡丹が嫌なら俺はコピーしたものを持ち歩くことにする」
灯なりに配慮したつもりなんだろう。
意外すぎるお願いごとに私は驚いて目を見張ったけど、私を見る灯の顔があまりにも真剣だから、つい笑顔にならずにはいられなかった。