不本意な初夜でしたが、愛され懐妊妻になりました~エリート御曹司と育み婚~
「……ふふっ。灯がほしいなら、別にいいよ。エコー写真も、また検診に行ったら貰えるだろうし」
もちろん、初めて貰ったエコー写真は特別だから、私も大切に取っておきたい気持ちはあるけど……。
だけど今は、灯がほしいと言ってくれたことが素直に嬉しかったし、何より今の灯なら私以上に写真を大切にしてくれそうな気がした。
「ありがとう。大事にする」
「ふふっ、どういたしまして」
和やかな空気に包まれたら、また自然と笑みがこぼれた。
こうしてまた、灯と穏やかな時間を過ごせる日が来るだなんて夢にも思っていなかった。
だって、つい数日前の私たちの状況からは考えられないことだ。
高校一年生のときに親の勝手で灯と結婚することが決まってからというもの、こんなふうにお互いに見つめ合って笑い合うことも一度もなかった。
「……今日の灯は、やっぱり今までの灯じゃないみたい」
ぽつりと口から滑り落ちた言葉に、無性に胸が熱くなる。
すると灯は、俯いた私の顔を観察するみたいにジッと見つめたあと、不意に私に向かって手を伸ばした。
「ん……」
目にかかっていた前髪を、灯が長い指ですくって耳にかけてくれる。
くすぐったくて反射的に顔を上げれば、灯の黒曜石のように綺麗な瞳と目が合った。