不本意な初夜でしたが、愛され懐妊妻になりました~エリート御曹司と育み婚~
 


「言っとくけど、俺は牡丹のこともお腹の子のことも、めちゃくちゃ大切にするつもりだから」

「え……?」

「当然だろ? 多分、牡丹が思ってる以上に俺は今回のことを嬉しく思ってるし、浮かれてる」


 予想外の言葉に今度こそ驚いて固まった私は、すぐに返事をすることができなかった。

 そんなに、私の妊娠を喜んでくれているの?

 意外そうに自分を見ている私を前に、灯は何故か切なげに微笑んだあと、一度だけ短く息を吐いてから思い切ったように口を開いた。


「本当は、ずっと後悔してたんだ。牡丹の意思を無視して、俺と無理矢理結婚させるようなことをして……」


 静かに語り始めた灯は、前かがみになると膝に腕を置いてまつ毛を伏せる。


「それに、あの晩も牡丹の気持ちを無視して牡丹を抱いて、傷つけた。俺は男として最低なことをしたと思う。本当に悪かった」


 そう言うと灯は頭を垂れた。

 いつも堂々としている灯のこんな姿は、これまで一度も見たことがない。

 同時に、あの夜のことを思い出した私の胸は、チクリと痛んだ。

 愛のない結婚と、愛のない初夜。ああ、私達はこのまま一生、愛を知らずに終わるのだと思ったら、たまらなく苦しい気持ちになった。

 だからこそ、まさか灯がこんなふうに気にして、後悔していたなんて意外だった。

 結婚のことだって、本当は私に申し訳ないと思ってくれていたってこと?

 さすがに、高校生のときのやり取りを思い出したらにわかには信じられない話だけど、今の灯が体のいい嘘をついているようには見えなかった。

 
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