不本意な初夜でしたが、愛され懐妊妻になりました~エリート御曹司と育み婚~
 


「灯のこと、信じてもいい?」


 結婚式での誓いの言葉のときのような形式的なものじゃない。

 私はたった今、灯が私の目を見て口にしてくれた言葉を信じたいと思った。

 そうすれば私達は、お腹にいる子と一緒に再出発ができるような気がした。

 ……なんて、それはさすがに都合の良い考えかもしれないけれど、本当にそうであったらいいと思ったんだ。


「ごめんね、急に変なこと言って」


 けれど、私がつい自嘲の笑みをこぼしたら、


「当然だ、信じてほしい」


 さも当然のことのように、灯が断言した。


「俺は牡丹と結婚すると決めた日に、牡丹だけは何があっても守ると心に誓った。お腹の子はもちろんだけど、俺は大前提として牡丹を幸せにしたいとずっと思ってたんだ」


 真っすぐな目は私を捕らえて離さない。情熱的な言葉に戸惑った私は、ただ狼狽えることしかできなかった。

 今の言葉は、一体どう解釈すればいいの?

 だってあの日、私達の関係を変えたのは間違いなく灯なのに。

 仲の良い幼馴染で、気の置けない友達だった私達の関係を壊したのは他でもない、灯自身だ。

 灯の真意は、あの頃から今まで何ひとつわからないまま。

 心が離れ離れになったあの公園で、灯は一体どんな気持ちで私と結婚すると宣言したの?

 
< 68 / 174 >

この作品をシェア

pagetop