不本意な初夜でしたが、愛され懐妊妻になりました~エリート御曹司と育み婚~
「私が仕事を続けたいって思うことでみんなの負担を増やすことにもなるだろうし、一概に『仕事を続けたい』って私の意思を貫いていいのかどうか、わからないけれど……」
だけど、そこまで言ってつい俯きそうになったとき、不意に灯の大きな手が私の手を掴んだ。
ハッとして顔を上げたら、灯の凜とした瞳と目が合って胸の鼓動がドクンと跳ねる。
「フジロイヤルが一流と呼ばれるまでに上り詰めたのは、そこで働くスタッフたちが一流だからだ。だけど、俺は別にフジロイヤルを国内外のセレブが訪れる一流ホテルにしたかったわけじゃない」
「どういうこと……?」
「俺が目指しているのは訪れるお客様もそこで働くスタッフも皆、幸せを感じられる場所だ。いくら仕事にやり甲斐を感じてスタッフとして一流であり続けても、働いている本人が幸せでなければなんの意味もないだろ?」
断言した灯は、私の手を握る手に力を込めると、続く言葉を一瞬言い淀んでから、今度は何かを諦めるように息を吐いた。
「だから、フジロイヤルのGMとしては、スタッフである牡丹が望む形で働かせてやりたい」
だけど私の夫としては、できれば無理をしてほしくないということなのだろう。