不本意な初夜でしたが、愛され懐妊妻になりました~エリート御曹司と育み婚~
「それと……こんなことは本当は言いたくないけど、俺の妻である牡丹が妊娠していても働きやすい環境であるという姿勢を見せれば、周囲に良い影響を与えられるかもしれない」
「良い影響を?」
「ああ。今後、牡丹と同じような状況になったスタッフたちに、良いガイドラインを示せるんじゃないかってことだ」
そう言った灯は、本当に不本意そうな顔をしていた。
多分……だけど、自分の仕事に私を利用しているみたいな言い方をするのは、嫌だったんだろう。
でも、灯の話は私からすると寝耳に水だった。
確かに、フジロイヤルの総支配人である灯の妻の私が妊娠出産を通して働きやすい選択をしていけば、今後、同じように妊娠出産を経験する女性スタッフたちには良い指針となれるかもしれない。
「もちろん、一部には嫌な顔をする人間もいるだろう。だけど、女性の社会進出が日本の発展に必要不可欠という時代に、嫌な顔をしているほうがおかしいからな」
さも当たり前のことのように言った灯のことを、私は夫としても自分が働くホテルの総支配人としても誇らしく思った。
「女性だけが何かを諦めてばかりいる世の中は、変だろ?」
ついさっき、灯はフジロイヤルが一流と呼ばれるのはスタッフが一流だからだと言ったけど、そのスタッフを束ねる総支配人である灯自身が、誰よりも先鋭的な考えを持っている一流なんだ。