不本意な初夜でしたが、愛され懐妊妻になりました~エリート御曹司と育み婚~
「とりあえず米田にはこのあとすぐに報告しよう。他のフロントスタッフたちにも基本的には報告するけど、安定期に入るまでは周囲に牡丹の妊娠の事実は伏せてもらう。それで牡丹は、今後は日勤のみの勤務とする。それでいいか?」
異論なんて唱えられようもなかった。
もしかして灯はこうなることを予想して、待合室で何かを調べながら色々と先のことまで考えてくれていたのかな……?
「その他に、何か不安に思うことはないか? というより、何か食べたいと思えるものはできたか?」
前者の質問は総支配人から、後者は夫としての灯からの問いに聞こえて、なんだかおかしかった。
コロコロと変わる灯の顔を見られるのは妻である私だけなんだ。
今さらそんなことを実感したら、なんだか少し嬉しくなって自然と顔が綻んだ。
「ふふっ、食べ物って言っていいかわからないけど、灯と話してたらバニラアイスが食べたくなってきたかも」
「わかった。今すぐ買ってくる」
「あ……待って!」
すぐに立ち上がろうとした灯と繋がっていた手を、私は離される前に強く握り返して引き寄せた。