不本意な初夜でしたが、愛され懐妊妻になりました~エリート御曹司と育み婚~
「どうした?」
「も、もう少しだけ、このままでいてもいい?」
「……どういうことだよ?」
「どういうことって……。別に、そのままの意味なんだけど……」
なんとなく、離れがたくて引き止めたんだ。
でも、そんなことは照れくさくてとても目を見ては言えなくて、私はそっと膝の上に視線を落とした。
っていうか、どういうことだよって何!? ちょっと、あまりに乙女心と言うか、女心がわかってなさすぎじゃない?
鈍感な灯に対して心の中では文句をつらつらと並べたものの、彼の体温がすぐそばにあることを、とても心地良く感じて安心感を覚えている自分がいた。
「灯と結婚することが決まってから、こんなふうに思うのは初めてで……。もう少しだけ、今の気持ちを感じていたいと思ったの」
蚊の鳴くような声で言うのが精いっぱいだった。
すると、突然大きなため息をついた灯は、何故か頭を抱えて俯いてしまった。