不本意な初夜でしたが、愛され懐妊妻になりました~エリート御曹司と育み婚~
「ちょっと冷たいかもしれないけど、我慢してくださいね」
今更だけど、灯の前でお腹を出すのはちょっと恥ずかしいな。
なんて私の気持ちは露知らず、朴念仁な灯はそばに備え付けられたモニターにくぎ付けになっていた。
まぁ、当然と言えば当然だよね。灯からすれば、エコー写真以外で赤ちゃんを見られるのは初めてなんだもの。
「見えますか? これが赤ちゃんのお顔ですね」
冷たいジェルが塗られた器具がお腹の上を滑る。
するとモニターに小さな人らしきものが写って、もぞもぞ動いているのが見えた。
「わ……可愛い」
「今、もしかして指しゃぶりしてませんか?」
目ざとく気づいたのは灯だ。言われてみれば確かに、赤ちゃんの手が口の前にあって指しゃぶりをしているようにも見える。
「ああ、そうですね。してますねぇ」
「ええ~。可愛い~!」
「この時期になると、だんだんと赤ちゃんの動きも活発になってきます。週数的にも赤ちゃんの大きさは標準くらいですね。お母さんのお腹の中で順調に成長してますよ」
「ほんとですか? よかった……」
思わずホッと安堵の息がこぼれた。
それというのも先生は気にしなくていいと説明してくれたけど、一時期悪阻で食べられるものが少なくなってしまい、そのせいで赤ちゃんの成長に影響が出たらどうしようと、ずっと気になっていたんだ。
何より目には見えないぶん、普段から赤ちゃんが私のお腹の中で元気でいてくれるのか、気になって仕方がなかった。