不本意な初夜でしたが、愛され懐妊妻になりました~エリート御曹司と育み婚~
「ほんとに、可愛い……」
モニターを見ながら、つい何度も同じ言葉を口にしてしまう。
白黒で、まだハッキリと顔が見えるわけではないけど、モニョモニョと動いている姿を見たら心の底から愛しくなってたまらなかった。
「ご主人、この動いているところが赤ちゃんの心臓ですよ」
と、先生が不意に、熱心にモニターを見つめていた灯に声をかけた。
話しかけられた灯はまた興味深そうに目を細めると、たった今先生に言われた赤ちゃんの心臓がある場所を眺めた。
「心臓だけでなく、胃などの臓器もできてきてますよ」
「……すごいですね。この子は妻のお腹の中で、一生懸命、生きているんですね」
噛み締めるように言った灯の瞳は、ほんの少しだけ濡れているような気がした。
そして私は不覚にも、灯のその言葉に鼻の奥がツンと痛んで目頭が熱くなった。
うわ……ダメだ。今の、ダメ。泣きそう。
これも妊娠してから私の身に起きた変化のひとつだ。
基本的に情緒が不安定。ちょっとしたことですぐに感情的になったり、涙が出そうになったりと、常に気持ちが忙しい。
「そうですね。ご主人の仰るとおり、赤ちゃんは一生懸命生きています。心臓の音も、聞いてみますか?」
「え! 心臓の音も聞けるんですか⁉」
驚いて思わず声が裏返った。
すると先生は穏やかな笑みを浮かべて、「ちょっと待ってくださいね」と私達に断りを入れ、操作していた機械を動かした。