不本意な初夜でしたが、愛され懐妊妻になりました~エリート御曹司と育み婚~
「このあたりなら、聞こえるかな」
先生がエコーの角度を変えた瞬間、ドッドッドッドッ……という予想していたよりも大きな音が診察室に響き渡った。
「これが……赤ちゃんの心臓の音ですか?」
ドッドッドッドッドッ……。
一定のリズムを刻む鼓動は、私達が自分の身体で感じる心臓の音よりも速く感じる。
「はい。赤ちゃん、元気ですね。きっと今日の検診はお父さんも一緒に来てくれて喜んでいるのかもしれません」
先生の粋な発言に、また不覚にも目が潤んでしまった。
ダメだ……ほんと、情緒不安定すぎる。
だけど、心を落ち着けるために灯の顔をチラリと盗み見たら、モニターを見ている灯がとても優しい笑みを浮かべていることに気が付き、胸がトクンと高鳴った。
「灯……?」
「……うん? どうした?」
「あ……っ。う、ううん、なんでもない」
自分でも何を言うつもりだったのかはわからない。
でも、赤ちゃんを見つめる灯の表情があまりにも穏やかで、幸せそうだったから……。
なんとなく。本当になんとなくだけど、私まで幸せな気持ちになったんだ。
『この子の父親が灯でよかった』なんて言葉か脳裏を過ぎって、胸の奥が熱くなった。