不本意な初夜でしたが、愛され懐妊妻になりました~エリート御曹司と育み婚~
「安定期には入りましたが、くれぐれも無理はしないようにしてください。あと、悪阻が落ち着くと食べ物が美味しく感じるってことで、ついつい食べ過ぎちゃう場合もあるから、体重の増加にも気をつけてくださいね」
その後、無事にエコーも終わって、私達は再度先生からの説明を受けた。
この病院では妊娠前の体重から出産まで、プラス十キロ以内に収めるというのが指針らしい。
診察の最後には看護師さんから妊娠中期の過ごし方や食事の注意などが書かれた冊子を渡され診察室を出た。
「赤ちゃん、順調でよかったね」
そして病院をあとにした私達は、その足で近くのカフェに立ち寄った。
季節は夏間近。これから更に日差しが厳しくなると思うと、ネットでよく見る『夏の妊婦は大変』なんて言葉を思い出してしまい、ほんの少し不安になる。
「順調なのは何よりだけど、さっき先生が言っていたとおり、安定期に入ったからと言って無理はするなよ」
アイスコーヒーを頼んだ灯は長い脚を組み、口酸っぱく身体が第一だと言及する。
私が妊娠してからというもの、灯は常にこうして私の身体を気遣ってくれていた。
重い物は私には絶対に持たせないし、買い物だって必要なものがあればすぐに買ってきてくれたし、家事も積極的にこなしてくれた。
更には私が悪阻で食べ物を吐き戻してしまったときも、文句のひとつも言わずに一時間以上、背中をさすってくれたこともあった。
仕事についても、妊娠前は帰宅時間が深夜になることが多かったのに、今は基本的には早い時間に家に帰ってくる。
これについては以前、たまたま職場で灯の秘書の園宮さんに会ったときに事情を聞けた。
『GMはこれまで、自分が圧倒的な仕事量をこなして会社に還元することで、結果的に牡丹さんを社会的にも家族としても守ることができると考えておられました』
つまり灯は、自分が仕事をして経済的な心配事を減らせば、妻である私を幸せにできると考えていたらしい。