不本意な初夜でしたが、愛され懐妊妻になりました~エリート御曹司と育み婚~
「バカ。俺が牡丹のつく下手な嘘に、騙されるとでも思ってるのか?」
真っすぐに私を見る灯は怒っているのに、なぜかとても悲しそうに見えた。
どうして、灯が今、そんな目をするんだろう。
泣いているのは私の方なのに、何故か灯のほうが私よりも辛そうだ。
「牡丹が本当は俺と結婚したくなかったのも知ってる。牡丹が俺を男として見てなかったことも、俺のことなんかちっとも好きじゃないってことも、俺は全部気づいてた」
「灯……?」
「それでも俺は、どうしても牡丹だけは誰にも譲りたくなくて……。紙切れ一枚で繋がった夫婦になって、卑怯な言葉で脅した挙句、俺に気持ちのないお前を抱いた。最低最悪の男だと自分でも思ってる」
苦しげに吐き出された言葉に胸が痛む。
私はただひたすらに、灯の話に耳を傾けることしかできなかった。
「だから俺に、こんなことを言う資格はないってわかってるけど……。でも、今くらい、俺を頼ってほしい。たとえ紙切れ一枚で繋がった関係だとしても、牡丹は俺の妻で、俺は牡丹の夫なんだ」
まるで懇願するように紡がれた言葉に、私の心は大きく揺れた。
結婚は人生のゴールだなんて、以前どこかで、そんな話を聞いたことがある。
だとすれば私のゴールは最低最悪のものだと、結婚式で誓いの言葉を口にしながら自分の運命を皮肉った。
不本意な結婚相手との、望まない結婚生活。
だけど本当は、灯は最初から私と違う思いでいたの?
灯は最初から私のことを……なんて、また淡い期待が脳裏を過ぎって吐く息が震えた。