不本意な初夜でしたが、愛され懐妊妻になりました~エリート御曹司と育み婚~
「どうすれば牡丹が笑ってくれるのか、ずっと考えてた。もしかしたら俺には一生、牡丹を笑顔にすることはできないんじゃないかとも思ったけど……。どうしても、この手だけは……牡丹の手だけは、離したくなかった」
私の手を自分の口元に引き寄せた灯の声も息も、震えていた。
ドクン、ドクン、と高鳴る心臓の音が聞こえる。
指先から伝わる熱は誠実で、身体は血液が沸騰したように熱くなった。
「ねぇ、灯……」
「うん?」
「灯はどうして、私と結婚したの?」
もう、ハッキリと尋ねずにはいられなかった。
次の瞬間、伏せられていた瞼がゆっくりと持ち上げられ、灯の黒目がちの瞳に射抜かれ、心臓がドキリと鳴る。
まるで周りの時間が止まったみたいな錯覚に陥り、喉が大きく上下した。
「そんなの、愛してるからに決まってるだろ」
迷いなく告げられ、こめかみを鈍器で殴られたような衝撃を受けた。
愛してるから……って、嘘でしょう? だって、灯が私のことをそんなふうに思っていたなんて信じられない。
「むしろ、それ以外にどんな理由があると思ってたんだよ」
「それは……たとえば、嫌がらせのために結婚したとか……」
「は? なんで嫌がらせで結婚なんてするんだよ。っていうか、俺が牡丹に嫌がらせをする理由ってなに」
「それは……私が気づかないうちに、何か灯を怒らせるようなことをして、それで怒った灯が嫌がらせで私と結婚した……みたいな」
しどろもどろに答えると、灯は何故か一瞬だけ驚いた顔をしたあと私から目を逸らして眉根を寄せた。