不本意な初夜でしたが、愛され懐妊妻になりました~エリート御曹司と育み婚~
 


「まぁ……それは当たらずとも遠からずかもしれない」

「え?」

「だから。高校生のときに、牡丹は俺と同級生の森ってやつに惚れてただろ。で、その話を牡丹から直接聞かされて、めちゃくちゃ腹が立って……。だから、結婚の話を現実にしてやる、牡丹を森なんかに渡すかよと思って、今に至る」


 思いもよらない話に、今度は私が驚いて目を見張った。


「え? じゃあ、灯って高校生のときから私のことが好きだったの?」

「は? そんなわけないだろ、もっと前からだよ」

「嘘でしょ……」


 絶句した。だってまさか、灯がそんなに昔から私のことを好きでいてくれたなんて思いもしない。

 というか、それならそうと早く言ってよ。

 こう言ったらなんだけど、ちょっと色々と拗らせすぎじゃない?

 たった今言ったことをもっと早く言ってくれていたら、私は何年も辛い思いをすることもなかったのに。


「ハァ……きっと牡丹はそういう顔をするだろうと思ってたから、言うのは嫌だったんだ。お前って本当に昔から俺のこと男として意識してないよな」

「そ、そんなこと……っ」


 ない、とは言い切れない。

 だって、確かに今の灯の話を聞く限りでは、灯が私のことをそんなふうに思っていてくれたなんて一ミリも気づかなかった。

 つまり私は本当に、灯のことを男の人として意識してなかったんだ。

 でも今は……灯のこと、ちゃんと男の人だって思ってる。

 私を抱いた腕の温かさも、たくましい身体も、色気のある声や言葉も全部、今でもちゃんと覚えているし……。

 
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