不本意な初夜でしたが、愛され懐妊妻になりました~エリート御曹司と育み婚~
「ありがとう、灯。両親とは、またいつか落ち着いてきちんと話したいとは思う。でも今日はちょっと疲れちゃったから、もう家に帰りたいかも」
曖昧に笑って素直に甘えると、灯は私の実家を一瞥したあと「そっか」と頷いてくれた。
「じゃあ、今日は帰ろう。あちこち動いて疲れただろうし、無理は禁物だからな」
優しい灯。決して無理強いをするようなことはなく、こうして私の意思を尊重してくれるのは、子供の頃の彼と同じだ。
だけど、改めて考えてみたら結婚以外で灯が私の思いを踏みにじるようなことってなかった。
そう思うと、私は実はもうずっと前から灯に大切にされていたのかもしれない。
私が気づかなかっただけで……灯は、いつも私が自分の足で歩いていけるように、そばで見守ってくれていたんだ。
「灯……ありがとう」
繋いだ手を握り返せば、灯がまた柔らかに微笑んだ。
春風みたいに優しい笑顔。
私は彼のすべてを包み込んでくれるようなその笑顔が、たまらなく好きだと思った。