雨上がりの帰り道


ザーーー。ザーーー。


6月。いつもより早い梅雨入りで、授業が終わった途端、バケツをひっくり返したような急な雨。
生徒たちは逃げるように教室を後にし、急いで帰路につく。


「あっちゃー。雨降るなんて聞いてない…」

傘を忘れた人もちらほら居て、昇降口で悲鳴をあげている生徒も多く、晶もそのうちの1人だ。


エリカに途中まで入れてもらおうと思ったが、今日はピアノの練習をしてから帰るようで、他のみんなは委員会や部活やらで帰るタイミングが合わず。武たち入れてもらうのも… 中学2年生にもなると噂が気になる年頃だ。



仕方ないから走って帰ろうと意を決し、リュックを頭の上に乗せ外に足を踏み入れたその時、



「晶!」

部活仲間とやって来た武が、声を掛けてくる。

「あ、武!部活は?」

「今日ミーティングだけだったから。」

「ふーん。それより見てよこの雨。最悪!」

「ばーか!だから夕方降るっつってたろ。」

武の言葉に一瞬膨れっ面になったが、
今朝の天気予報を見逃していた自分に反省し、
やっちゃった、と晶は笑って舌を出した。

「じゃ、お二人さん!俺たちはお先にー」

武と来たバスケ部の2人がにやにやしながらそそくさと学校を後にし、武はムッとして見つめている。

雨音だけが響き渡り、残された2人の間に沈黙が流れた。


「…それじゃあ私も!」


そんな沈黙を破るかのように晶が手を振り再び走り出そうとすると、


「おい待てよ!!」

「?」

「…風邪引くだろ。家まで入って行けよ。」

「え?ああ、へーき!走って帰ればすぐだから」

こういう時女の子は素直に甘えれば可愛いのだろう。私らしくないし、と相手が武だからか気恥ずかしさが勝ってしまう。

「いいから!」

武は傘を広げ、目も合わせず強引に晶の手を取ると傘の中に晶を入れて歩き出した。

「…ちょっと!」

相変わらず強引な所にため息をつくも、武の優しさに顔がほころぶ。



急な大雨のせいで生徒達は急いで学校を後にし、外にはもう人の姿は居なかった。

結局晶は武の傘の中に入れてもらい、なんとなくよそよそしく、学校を後にした。





「ねえ見て武!虹!!」
「…珍しいな。」

気づけば雨が止み、武が傘を下ろすと空には大きな虹がかかり2人を見下ろしていた。




微笑み合って手を繋ぐと、ゆっくりと歩き出した。






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