眠れない総長は眠り姫を甘く惑わす
「じゃあ、手当しますね」
「……」
家出中に、ずっと寝泊まりしていた空き部屋。
その部屋の中で、消毒液を小町さんの膝につける。
アルコールの匂いが香って、鼻の奥をツンと刺激した。
「痛みますか?」
「……別に」
沁みてないならこのまま続けよう、そう判断してすぐ。
「ねえ」
「、…」
なんらかの会話を切り出される言葉に、ガーゼを持つ手がビクッと震えた。
思った以上に緊張してるんだ、私……。
「白夜の人たちが話してた。みのりさんて、鬼炎魔の秘密を知ってるの?」
「……」
突然振られた話題と自覚した緊張のせいで、動揺が走る。
だけどすぐに気を取り直して、消毒を再開した。