眠れない総長は眠り姫を甘く惑わす
虚勢はどこへいったのか。
強烈な虚無感に襲われて、言葉すら出なくなる。
そんな惨めな姿にクスっと笑って、小町さんは私の手を自分の胸に持っていった。
「好きな女にするように、御影さん、ここを触ってくれたの」
「っ……!」
手を振り払ったのは、醜いくらいの嫉妬心が爆発したから。
なにか言い返したくて、でも思考がまとまらなくて。
嫉妬の塊を抱えたまま、感情任せに口が開く。
「私だって、触ってもらった」
「それは鬼炎魔の秘密を知るためでしょ」
「違う、秘密には興味ないって言ってくれた!」
あの言葉は嘘じゃない。
御影さんは、秘密なんて関係なく私に優しくしてくれた。
その優しさだけが、記憶のない私を救ってくれたただひとつの現実だから。
「みのりさんて、バカなの?」
「…え?」
「そんなの、そう言うしかないでしょ」
「……」
「秘密のために優しくしてるなんて言ったら、記憶が戻るのを待たずに出ていかれるかもしれないのに」
「、…」
グラリ…視界が歪む。
「敵の秘密を知るためには、嘘をついてでも傍にいてもらわないと」