眠れない総長は眠り姫を甘く惑わす
「この家賃にこの間取り、十中八九一人暮らしだな」
「じゃあ、家族は……」
「いないんじゃねーの。学生証の緊急連絡先、なしになってる」
家族が、いない……?
「だって私、まだ高校生ですよね?」
「そういうやつもいんだろ。俺みたいに」
あまりにもサラッと言うから、聞き逃しそうになった。
でも確かに今、『俺みたいに』って言った。
「家族、いないんですか?」
男が頷くのを確認したら、堰を切るように聞きたいことが溢れ出てくる。
「じゃ、じゃあ……あなたはダレ?名前は?歳は?どうして一人で住んでるの?」
「へぇ、自分のことより俺に興味出てきた?」
「……!」
からかうような目が、布団の中の私に無遠慮に近づけられる。
キレイな碧眼に自分が写り込んでいるのが見えて、恥ずかしさから顔が火傷しそう。
体が痛くて抵抗できない代わりに、思いっきり目を背けた。