眠れない総長は眠り姫を甘く惑わす
私の帰りが遅いことを心配し、あとをつけていたらしい御影さんは容赦なく男たちを殴り捨てていった。
お母さんに手をあげられても、御影さんは1度も抵抗しなかったのに。
でも、それはきっと自分のことだったから。
私を守る御影さんは恐ろしいほどの強さで、瞬く間にチンピラたちを片付けた。
……そういえば、小さい頃から武道を習ってて、すごい大会に何度も出たことがあるって言ってたっけ。
そんなことを考えなら、恐怖に気を失ったのを覚えている。
私が次に目が覚めたのは……
2人で住んでいる、おんぼろアパートだった。
「俺、この家出てくから」
「え……?」
目が覚めると突然、御影さんはそんなことを口にした。
「どういうこと、……嘘だよね、……?」
「嘘じゃない」
「……だって、ずっと2人で生きていくって、約束したのに、、」
「……」
「御影くん、……お願い、待って、……待ってよ、行かないで……っ」
「、…」
「御影くんっ、……!! 1人に……しないで、……」
どんなに縋っても、どんなに泣いても……
御影さんがあの部屋に戻ってくることはなかった。