眠れない総長は眠り姫を甘く惑わす



「、、…御影……くん……?」



───『大丈夫』

そう言っているような強くて柔らかな眼差しは、とても懐かしいものだった。



「ずっと傍にいるから、心配するな」

「、…」



私を落ち着かせるための笑みは、『御影さん(・・)』じゃなく『御影くん(・・)』。


王子様みたいに、優しい空気を(まと)っている……



「みのりは事情を聞かれるくらいで捕まりはしない。ヤクザじゃあるまいし、銃を所持するのはさすがにいかれてる。藤堂をこの世界から消すには警察しかない」



そう、だけど。



「でも、御影さんが……」

「俺は売られた喧嘩に応えただけだ。ちゃんとみのりのとこに帰れる。言ったろ、傍にいるって」

「、、…」

「だから今は、銀を助けることだけ考えろ」

「、、、、…ッ、…」



そうだ。


そうだよ。


お母さんを見殺しにした記憶が蘇った今、あのときと同じことを繰り返したくない。



銀くんのことを、絶対に助けたい。


< 192 / 244 >

この作品をシェア

pagetop