眠れない総長は眠り姫を甘く惑わす
「……辛くない?」
「全然! って言ったら、さすがに嘘になるっすけど」
静かに目線を伏せたリクくんは、数秒を置いて柔らかく微笑んだ。
銀くんみたいに、穏やかな顔で……
「飲食禁止の場所でポテトチップス食べて怒られたときみたいに、今度はオレが銀さんを怒らなきゃ。『こら、なに柄にもないことやってんだー!』って」
へへっと、リクくんは顔を上げて。
「辛いより、今は早く文句言いたいっす!」
言い切った笑顔に嘘はない気がして、安堵の息が漏れた。
「そうだね、じゃあ一緒に文句言おう! 銀くんが目を覚ましたらすぐ」
「はいっす!」
『撃て』と言われてできなかった銀くんの気持ちが、どうか私たちが信じる通りでありますように。
オレンジ色の空に、そんなことを願った。