眠れない総長は眠り姫を甘く惑わす
銀くんにさらわれて記憶をなくしたことで、私たちがまた一緒にいられるようになったなら。
良くも悪くも、私の幸せは銀くんのおかげかもしれない。
……なんて、そんな単純な話じゃないだろうけど。
「……懐かしい」
独り言を呟いて、もう一度室内を見渡したとき。
「ほんとに全部思い出したんだな」
「───!」
突然の声に肩が跳ねる。
だけど確信をもって、その声のほうに振り向いた。
───そこに、御影さんが立っているはずだから。
「……」
「、…」
1ヶ月ぶりの御影さんが、体を預けるようにドア枠に寄り掛かっている。
「はぁ……鑑別所1ヶ月とか長すぎだろ。俺、なんもしてねえっつーのに」
「、…どうして、ここに」
「六畳一間にいなかったから、ここだと思ったんだよ」
「っ、…」