眠れない総長は眠り姫を甘く惑わす



御影さんは……

御影くんは、とても強くてとても弱いということ。



彼のお父さんが亡くなったとき、私がどれだけ励ましても声が届くまですごく長い時間を要した。



震えて、泣いて、……泣いて泣いて泣いて。



御影さんはそれくらい、お父さんを……大切な人を大事に想う人だから。


きっと御影さんのお母さんが亡くなったときも、同じように心を痛めたに決まってる。


それなのに、大切な人たちの死に加えて、私のお母さんからの暴言と暴力まで始まって……


そのとき、御影さんはまだたったの中学生だったのに。


抱えるには多すぎるたくさんの傷を、それでも抱えながら生きていたんだ。



それがどれほど苦しいことか。


彼よりも幼かった私は、きっと真っ直ぐ目を向けられていなかった。




だけど今なら……



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