眠れない総長は眠り姫を甘く惑わす




銀くんのことだって、表には出さなくてもまた深い傷になっているってわかるから。




「……御影さん」

「、…」




肩にもたれる体を、今度は私が顔ごと抱きしめて囚われの王子様にする。



「小町さんのことは思い出したら辛いし、苦しいし腹立つし悲しいし悔しいけど」

「……」

「でも私も、銀くんと同じことをしようとした。苦しくて苦しくて苦しくて……楽なほうに逃げようとした」

「、…」



私たちはお互い、どうしようもないそんな2人だ。


でもそれが、どれほど相手を傷つけることか、どれだけ後悔することなのか今の私たちだからこそわかるから。



「私はもう、御影さんとしかしない。絶対絶対、絶対にしない!」

「、…」



言い切って、御影さんを解放して見上げる。



「御影さんは?」

「……」



尋ねると、右手が静かに動いて……


頬を優しく包んでくれた。


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