眠れない総長は眠り姫を甘く惑わす







「帰る? 六畳一間」

「……」

「それとも、またここに一緒に住むか?」



しばらく抱きしめ合ったあと、いつしか体勢は変わり、御影さんの足の間に私は座り込んでいた。


後ろから抱きしめてくれる手の力が緩んだあと、どこへ帰るかの二択を迫られる。



どっちの家にも、大切な思い出がある。


どちらかを選ぶのは、すごく難しい選択だけど……



「帰りたい、六畳一間に」



1人で過ごした記憶が残る、この家よりも。


もう一度御影さんに恋をした、六畳一間に帰りたい。




「了解」



帰ると決めて、立ち上がって部屋を見渡す。


きっとこの部屋は、近々解約することになるんだろうな。



「荷物、今度整理しに来ないとな」

「うん、そうだね」

「つーか変なタイミングになったけど、これやる」

「……?」



ポケットから取り出したなにかを、御影さんは私の手の平に乗せた。



……ネックレス?


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