眠れない総長は眠り姫を甘く惑わす
「怖いのか?」
「そりゃあ、こんな話を聞いたら……」
暴走族の会合だって、正直足がすくむほど怖い。
「ふーん」
適当な相槌のあと、ふわりと手に温もりが走る。
驚いて視線を向ければ、前を向いて歩くまま、御影さんが私の手を軽く繋いでくれていた。
「……なんで手、繋ぐの?」
「怖いんだろ」
「怖い、けど」
暴走族の世界が怖いのに、その総長に手を繋いでもらうなんて。
しかもそれで、少し安心しているなんて。
「……変なの」
「あ? なんか言ったか」
「ううん、なにも」
怖いのに、その世界の中心にこの人がいるのなら、少し……ううん、もっと知ってみたい気がするなんて。
目が覚めて2週間。
……私はきっと、どうかしてしまったんだ。