眠れない総長は眠り姫を甘く惑わす
ピッ───
ビルのエントランスで、御影さんがカードキーを機械にかざす。
間もなく開いた自動ドアの向こうに、吸い込まれるように足を進めていく。
手は、繋がれたまま。
どこへ向かうのかもわからない私を、誘導してくれる大きな手だけが今は頼りだ。
引かれるように半歩後ろを歩きながら、向かった先は奥に構えるエレベーター。
「こ、このビル20階建てなんですね。エレベーターホールも広くてホテルみたい」
階数ボタンから、20階建てのビルだと知る。
乗り込んですぐ御影さんが押したのは、15と書かれたボタン。
「あ、15階が目的地なんですね。エレベーターの中は案外普通?」
ぐんぐん上昇する小さな箱の中で、緊張も更に上昇して。
「そ、そうだ。私、今度御影さんに……」
紛らわすためのお喋りが止まらないまま、繋がれた手に無意識に力が入った、
その直後───
「お前、うるさい」
え……
目の前の視界が遮られたと思ったときには、
二人だけの箱の中、キスされていた……