眠れない総長は眠り姫を甘く惑わす
「御影さん、お疲れ様です」
ドアが開き一歩踏み出した途端、中にいる人たちが一斉に立ち上がり頭を下げる。
角度まで決まっているんじゃないかと思うほど、誰の頭も飛び出していない。
本当に総長だった……。
今更、そう思い知らされる。
下げられた頭たちを横目に、御影さんが目指す場所。
ひと目であの席だとわかるほど、ひとつだけ厳めしい構えの椅子がある。
そこに辿り着いてすぐ、御影さんは座ることなく私を一歩前に押し出した。
「こいつ、綾瀬みのり。鬼炎魔に狙われてっから、俺んとこで匿ってる。危害加えられることがあったら白夜は終わりだと思え」
それは即ち、白夜の総力を上げて私を守るということ。
正直、寒気がするほどここの空気は恐ろしいけど……
そんな人たちが味方にいることは、恐ろしさと同じくらい心強かった。