眠れない総長は眠り姫を甘く惑わす
部屋から出ることは当然許されず、隅にある黒の革ソファーに座り会合を傍観することになった。
怒声、罵声が飛び交うたびに肩をびくつかせ、結局は泣きたい気分に戻る。
シマがどうとか鬼炎魔の総長がどうとか、
聞いてたってわからないことばかりなのに、威圧と気迫が凄まじくてとにかく怖い。
「どうしますか、御影さん」
「決定的な証拠がないなら動くのはまだ早い。今手中にある情報は全員頭ん中叩き込んどけ。可視化して盗られるヘマはないよう徹底しろ」
「───はい」
つい数秒前まで罵声を飛ばしていた男も、御影さんの声には短い返事で言いなりだ。
……ううん、“言いなり”、ではない。
これを言葉にするならば、『忠誠』───
そうとしか取れない空気が確かに伝わって、また彼の怖さと凄さを目の当たりにした。
まるで映画のワンシーンを見ているような、現実味のない世界。
そんな異世界に迷い込んだ気分でいると───